お子さまの学校での視力検査で「視力が低下している」と指摘され、ご心配されているお母さまは少なくないでしょう。特に「C判定」や「D判定」という結果を受け取ると、すぐにメガネが必要なのか、このまま視力が悪くなってしまうのかと不安になるかもしれません。しかし、お子さまの近視は非常に複雑で、一度や二度の視力検査だけでその程度やメガネの必要性を判断することは難しいものです。
今回は、学校検診の結果に一喜一憂せず、お子さまの目の健康を総合的に判断し、適切な対応をするためのポイントについて詳しくご説明いたします。
学校の視力検査で「C判定」「D判定」…どうすれば良いですか?

学校で行われる視力検査は、あくまで早期発見を目的としたものです 。大勢のお子さまが一度に検査を受けるため、集中力が続かなかったり、見ようと意識しなければ正確な結果が出にくい「自覚検査」であるという特性もあります 。そのため、学校での判定が必ずしも正確な視力を示しているとは限りません。
もし「C判定」(0.6〜0.3未満)や「D判定」(0.3未満)と指摘された場合は、日常生活で黒板の文字が見えにくいなど、すでに不便を感じている可能性があります 。このような判定を受けた場合は、まずは一度、眼科を受診し、専門的な視力検査を受けてみることをお勧めします 。
なぜ一度の検査ではメガネの必要性が判断しにくいのですか?

お子さまの視力は、非常にデリケートで様々な要因に影響されます。一度の検査でメガネの必要性を判断するのが難しい理由はいくつかあります。
- 強いピント調節力
子どもの目は、大人に比べてピントを合わせる力が非常に強い特徴があります 。そのため、一時的な目の疲れや緊張によって、実際よりも視力が低く測定されてしまうことがあります。 - 精密検査の必要性
正確な目の度数を知るためには、目のピント調節機能を一時的に休ませるための点眼薬(サイプレジンやアトロピンなど)を用いた精密検査が必要となる場合があります 。この目薬を使うと、一時的にピントが合わなくなったり、瞳が大きくなって眩しくなったりしますが、お子さまに本当にメガネが必要か、どのくらいの度数が適切かを判断するために大切な検査です 。 - 多様な影響因子
近視の進行には、遺伝的要因(ご両親が近視かどうかなど)と環境的要因(デジタルデバイスの使用時間、屋外活動の有無、読書時の姿勢など)の両方が関係しています 。これらの生活習慣や背景を総合的に考慮し、判断する必要があります。 - 他の目の病気の可能性
視力低下の原因は近視だけではありません。遠視や乱視、あるいは目の病気(結膜炎、逆さまつげなど)が隠れている可能性もあります 。早期に治療すれば改善するものもあるため、専門医による診断が重要です 。
近視を放置すると、お子さまの生活や学業に影響が出ますか?

視力低下を放置することは、お子さまの日常生活や学業に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
- 学業への影響
黒板の文字が見えにくい、教科書を読むのがつらいといった状況は、学校の授業についていくことにストレスを感じさせ、学習への自信の低下や学力の伸び悩みに繋がることも考えられます 。実際に、視力の悪い子どもにメガネをかけさせたところ、成績が向上したという研究データも報告されています 。 - 日常生活の支障と安全性の低下
ぼやけた視界での生活は、段差につまずく、ボールを避けられないなど、事故やケガのリスクを高める可能性があります。 - 集中力・生産性の低下
目が常にピントを合わせようと頑張ることで、目の疲れや頭痛を引き起こし、集中力の低下や作業の生産性の低下に繋がります。 - 若年性老眼(スマホ老眼)のリスク
目が疲れる状態が続くと、ピント調節機能が著しく低下し、20〜30代で「スマホ老眼」と呼ばれる若年性老眼の症状が現れることもあります。
お子さまの近視の進行を抑える方法はありますか?

一度発症した近視の進行を完全に止めることは困難ですが、その進行を抑制するための様々な治療法が開発されています。眼球の成長は16歳頃まで続くため、低年齢で近視が発症すると、将来的に強度近視に至る可能性が高まります 。
主な近視進行抑制治療には、以下のようなものがあります。
- 薬理学的アプローチ:
- 低濃度アトロピン点眼液(マイオピン)
シンガポールや国内外の臨床研究で有効性が証明されており、近視の進行を平均60%軽減させると言われています 。副作用が極めて少ないのが特徴です 。 - 光学的アプローチ:
- オルソケラトロジー
寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を変化させることで、昼間は裸眼で過ごせるようにする治療法です 。近視進行抑制効果も報告されています(32%〜63%) 。 - 多焦点コンタクトレンズ
老眼矯正にも使われるレンズですが、子どもの近視進行抑制にも効果があると報告されており、オルソケラトロジーに匹敵する有効性が示され始めています 。
- オルソケラトロジー
- 環境的アプローチ(生活指導)
- 屋外活動の増加
1日2時間以上は屋外で過ごすことが近視予防に有効とされています 。直射日光でなくても、木陰などでも十分な照度が得られます 。 - 適切な視距離と休憩
読書や書き物をするときは、少なくとも30cm以上離して作業し、30分に一度は遠くを見て目を休ませる「30分ルール」を実践しましょう 。 - 十分な明るさ
読書や書き物をする際は、200ルクス以上の十分な明るさを保つようにしましょう 。 - デジタルデバイスの使用制限
スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスの長時間使用は、目の負担を増やすため、適切な使用を心がけましょう 。
これらの治療法や生活習慣の改善については、お子さまの目の状態に合わせて眼科医と相談し、最適な方法を選択することが重要です。
メガネは本当に必要?正しいメガネ選びと付き合い方

「メガネをかけるとさらに目が悪くなるのでは?」という心配はよく聞かれますが、これは誤解です。適切な度数のメガネを正しく使用すれば、視力を下げることなく、快適に過ごすことができます。むしろ、視力が悪いのにメガネをかけないでいると、常にピントを合わせようと目が必要以上に頑張り、目の疲れや頭痛を引き起こす可能性が高まります。
- 適切な度数のメガネを選ぶ
お子さまの目は成長とともに変化するため、定期的に眼科を受診し、その時の視力に合った適切な度数のメガネを選ぶことが大切です 。度が弱すぎたり、強すぎたりするメガネは目に負担をかける可能性があります。 - 使用シーンに応じた使い分け
遠くを見るためのメガネと、勉強や読書、タブレット学習など近くを見るためのメガネを使い分けることも、目の負担を軽減する上で有効です。 - フィッティングの重要性
メガネは、レンズの度が合っているだけでなく、フレームがお子さまの頭の形にフィットしていることも重要です 。フィッティングが悪いと、見え方が不安定になったり、メガネをかけなくなったりする原因になります 。
まとめ
学校の視力検査で視力低下を指摘された場合、すぐに不安になるかもしれませんが、一度の検査で全てを判断することはできません。お子さまの近視は、遺伝や生活習慣など様々な要因が複雑に絡み合っています。
大切なのは、まずは眼科を受診し、点眼薬を用いた精密検査などによって、お子さまの目の状態を正確に把握することです。そして、本当にメガネが必要かどうか、あるいは近視の進行を抑制するための治療法があるのかどうかを、眼科医と相談しながら総合的に判断することが重要です。適切なメガネの装用や、屋外活動の増加、デジタルデバイスとの付き合い方など、日々の生活習慣を見直すことも、お子さまの目の健康を守る上で非常に大切です。
お子さまの健やかな成長のためにも、当院にて詳しい検査を行わせていただきます。お気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q: 学校の視力検査で「A判定」だった場合でも、眼科を受診した方が良いですか?
A: 両目ともA判定でなかった場合は、眼科受診をお勧めします 。A判定でなかった理由をしっかり調べる必要があるからです。近視の進行だけでなく、遠視や乱視、その他の目の病気が隠れている可能性もありますので、早期発見のためにも積極的に眼科を受診してください 。
Q: 子どもがスマートフォンやタブレットを長時間使っています。近視の原因になりますか?
A: スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスの長時間使用は、近視になる確率を高める要因の一つと考えられています 。特に、画面との距離が短くなりがちであることや、集中して瞬きが減ることなどが目の負担を増やします 。使用時間を制限したり、30分に一度は遠くを見る休憩を挟んだりするなどの工夫が大切です 。
Q: 近視の進行を抑える点眼薬は、副作用がありますか?
A: 近視進行抑制に用いられる低濃度アトロピン点眼液(マイオピン)は、通常の濃度のアトロピン点眼薬に比べて副作用が極めて少ないのが特徴です 。日中の光のまぶしさや、手元を見る機能にほとんど影響を与えないとされています 。ただし、使用にあたっては必ず眼科での処方と指導が必要です。
Q: メガネをかけ始めたら、視力がさらに悪くなるという話を聞きましたが本当ですか?
A: いいえ、適切な度数のメガネを正しく使用すれば、視力がさらに悪くなることはありません。メガネを外した時に見えにくく感じるのは、メガネをかけた状態に目が慣れたためであり、目が悪くなったわけではありません。むしろ、視力が悪いのにメガネをかけないで無理をしていると、目の疲れや頭痛を引き起こし、かえって視力低下を招く可能性もあります。
Q: オルソケラトロジーや多焦点コンタクトレンズは、何歳から始められますか?
A: オルソケラトロジーは、寝ている間にハードコンタクトレンズを装用するため、お子さま自身や保護者の方の管理能力が重要になります 。多焦点コンタクトレンズはソフトコンタクトレンズであるため、装用時の刺激が少なく、比較的装用しやすいとされています 。いずれの治療法も、お子さまの目の状態や年齢、生活習慣などを考慮し、眼科医が適応を判断しますので、まずは眼科にご相談ください 。
院長より皆さまへ
子供の近視はさまざさな因子が影響をしますので、1回や2回の視力検査ではメガネの必要性や近視の程度の判断は難しものがあります。自宅での生活習慣、根気よい視力検査、あるいはご両親が近視かどうかなど?
場合によっては点眼により精密検査を行い本当に子供たちにメガネが必要かどうかを総合的に判断する必要があります。学校検診でお子さまの視力ででにくかったなどの症状の際には一度、眼科にて専門の検査をお受けすることをおすすめします。
この記事の監修医師
