当院で良くご質問いただく「ものもらい」についてですが、ものもらいができると直ぐに切開する必要があるのか?などについて詳しくご説明いたします。
そもそも「ものもらい」って何ですか?種類と症状を教えてください。
「ものもらい」は、一般的にまぶたにできるできものの総称ですが、医学的には主に二つの種類に分けられます。一つは「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」で、まぶたの縁にある汗腺や脂腺に細菌が感染して炎症を起こすものです。赤みや腫れ、痛みを伴うことが多く、化膿すると中央に白い膿点が見えることがあります。これは「めばちこ」や「めいぼ」と呼ばれることもあります。
もう一つは「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」で、まぶたの脂腺(マイボーム腺)の出口が詰まり、中に分泌物が溜まってしこりになったものです。痛みはあまりなく、まぶたにしこりを感じることが特徴です。細菌感染を伴うと、麦粒腫のように炎症を起こすこともあります。
ものもらいは自然に治るものですか?自宅でできるケアはありますか?
ものもらいの種類や症状の程度にもよりますが、軽度の麦粒腫であれば、清潔に保ち、目を温めるなどの適切なケアを行うことで、自然に治癒することが期待できます。特に麦粒腫の場合、患部を温める「温罨法(おんあんぽう)」は、血行を促進し、膿の排出を助ける効果があります。
ただし、自己判断で無理に潰したり、不衛生な手で触ったりすることは、かえって症状を悪化させる原因となるため、避けるようにしてください。自宅でのケアだけで改善が見られない場合や、症状が悪化する場合は、早めに眼科を受診することが重要です。
ものもらいの治療法にはどんなものがありますか?切開以外の方法も知りたいです。
ものもらいの治療法は、その種類や進行度合いによって異なります。麦粒腫の場合、細菌感染が原因ですから、抗菌作用のある点眼薬や、症状が重い場合には内服薬が処方されます。これにより、炎症を抑え、感染を鎮めることを目指します。
霰粒腫の場合、細菌感染を伴わない場合は、自然治癒を待つことも多いです。炎症を伴う場合は、麦粒腫と同様に点眼薬や内服薬が用いられます。また、ステロイドの注射でしこりの炎症を抑える治療法もあります。これらは、切開を避けるための第一選択肢となることが多いです。
どのような場合に切開が必要になるのですか?手術の痛みや流れも教えてください。
ものもらいの切開は、主に薬物療法で改善が見られない場合や、しこりが大きくなって視界の妨げになる場合、見た目が気になる場合などに検討される治療法です。特に、霰粒腫で中に溜まった分泌物が吸収されずに残ってしまった場合や、炎症がひどく、膿が溜まってしまっている麦粒腫で、自然な排出が難しい場合に行われます。
切開手術は、通常、局所麻酔を施してから行われますので、手術中の痛みはほとんど感じません。まぶたの裏側から行うことが多く、これにより皮膚に傷跡が残りにくくなっています。手術時間は数分程度と短く、日帰りで行われることがほとんどです。術後は、しばらく点眼薬を使用し、患部の安静を保つことが大切です。
ものもらいの再発を防ぐにはどうすれば良いですか?日常生活で気を付けることはありますか?
ものもらいの再発を防ぐためには、日頃からの目のケアが非常に重要です。まず、目の周りを清潔に保つことが基本です。洗顔時にまぶたの縁も丁寧に洗い、化粧品が残らないようにしっかりと落としましょう。
また、手で目をこすらない、コンタクトレンズの適切な管理と清潔を保つことも大切です。パソコンやスマートフォンの長時間使用は、目の疲れや乾燥を招き、ものもらいの原因となることがあるため、適度な休憩を取り、意識的にまばたきの回数を増やすことも心がけましょう。バランスの取れた食事や十分な睡眠も、体の免疫力を高め、目の健康維持に繋がります。
ものもらいかなと思ったら、すぐに眼科を受診すべきですか?
ものもらいの初期症状は、軽度であれば自宅ケアで様子を見ることも可能ですが、症状が悪化する前に眼科を受診することをお勧めします。特に、痛みや腫れが強い場合、視力に影響が出る場合、しこりが大きくなる場合、または何度も繰り返す場合は、自己判断せずに専門医の診察を受けることが大切です。早期に適切な診断と治療法を受けることで、症状の悪化を防ぎ、より早く回復へ向かうことができます。
まとめ
「ものもらい」は多くの人が経験する目のトラブルですが、その種類や適切な治療法、そして切開が必要となるケースについてご理解いただけたでしょうか。麦粒腫と霰粒腫では症状や対処法が異なり、必ずしも切開が必要となるわけではありません。点眼薬や内服薬、自宅でのケアで改善が見られることも多いです。
しかし、症状が改善しない場合や悪化する場合には、専門の眼科医が教える適切な治療法を受けることが最も重要です。日頃から目を清潔に保ち、生活習慣を見直すことで、ものもらいの予防にもつながります。目の不調を感じたら、まずは眼科にご相談ください。
よくある質問/Q&A
Q:ものもらいは人にうつるものですか?
A: いいえ、基本的にものもらいは人にうつる病気ではありません。細菌感染が原因の場合でも、人から人へ感染することは稀ですのでご安心ください。
Q:ものもらいができやすい体質というのはありますか?
A: はい、目の周りが不衛生になりやすい方や、皮脂分泌が多い方、肌が脂っぽい方はものもらいができやすい傾向にあります。また、糖尿病などの基礎疾患がある方も、免疫力の低下からできやすくなることがあります。
Q:コンタクトレンズを使用中でも、ものもらいの治療はできますか?
A: ものもらいの治療中は、原則としてコンタクトレンズの使用を中止し、メガネを使用することをお勧めします。コンタクトレンズがものもらいを悪化させる原因になったり、治療を妨げたりする可能性があるためです。
Q:子どものものもらいの場合も、大人と同じ治療法ですか?
A: 基本的な治療法は大人と同じですが、お子様の場合、自分で目薬を差すのが難しかったり、目をこすったりする可能性があるため、保護者の方の注意深いケアが必要です。切開が必要な場合も、全身麻酔を検討するなど、お子様に合わせた配慮がなされます。
Q:目薬だけで治るものもらいと、そうでないものもらいの見分け方はありますか?
A: 痛みや赤みが強く、数日で悪化する麦粒腫は、目薬での改善が期待できます。一方、痛みはほとんどなく、しこりとして触れる霰粒腫は、目薬だけでしこりがなくならないこともあります。ご自身での判断が難しい場合は、眼科医にご相談ください。
院長より皆さまへ
ものもらいと言うと直ぐに切開すると思う患者さんが多いようですが、そんなことはありません。
特に炎症が強く痛みが強い場合は、切開を行っても腫れが引かないばかりか返って悪化する場合もあります。まず、目薬や飲み薬で治療を行い、それでもどうしでも治らないような場合のみ切開をします。
切開をしなくてはならないと言うわけではありません。