冬の訪れとともに、肌の乾燥だけでなく「目の不調」を感じる方が急増します。空気の乾燥に加え、暖房器具の使用、長時間のスマホやデスクワークによる瞬きの減少など、冬は目にとって非常に過酷な環境が揃う季節です。単なる「ドライアイ」だと思って放置していると、角膜(黒目)に傷がついたり、視力低下を招いたりすることもあります。
今回は、冬に特有の目の乾燥症状の原因と、医学的な視点に基づいた正しい対策、そして放置してはいけない症状について解説したいと思います。
なぜ冬になると目の乾燥が急激に悪化するのか?

冬に目の不調が増える最大の要因は、環境と身体機能の両面にあります。
まず環境面ですが、日本の冬は湿度が低く、空気が非常に乾燥しています。さらに室内ではエアコンやヒーターなどの暖房器具を使用するため、湿度がさらに20%〜30%台まで下がってしまうことも珍しくありません。湿度が低いと、目の表面を覆っている涙があっという間に蒸発してしまうのです。
次に身体の機能面です。気温が下がると、まぶたの縁にある「マイボーム腺」という油分を出す器官の働きが低下します。涙は通常、一番外側を油の膜が覆うことで蒸発を防いでいますが、寒さでこの油分が固まりやすくなり、分泌量が減ることで、涙が非常に蒸発しやすい状態(ドライアイ)になってしまうのです。
「目が乾く」以外にも注意すべき症状はあるのか?

「目がカサカサする」という典型的な症状以外にも、乾燥が原因で起こる不調は多岐にわたります。以下のような症状があれば、目がSOSを出している可能性があります。
- ゴロゴロする・異物感がある
目の表面が乾いて摩擦が強くなり、瞬きのたびに角膜が擦れている状態です。 - 光がまぶしい
涙の膜が均一でなくなり、光が乱反射してまぶしさを感じやすくなります。 - 夕方になると目が見えにくい
目の疲れ(眼精疲労)とともに、乾燥によってピント調節機能が低下します。 - 目が重い・奥が痛い
乾燥による負担が続き、目の筋肉が緊張して起こります。
涙が出て止まらないのも「乾燥」が原因なのか?

はい、実は「涙目(流涙)」は冬のドライアイによく見られる症状の一つです。これを医学的には「反射性分泌」と呼びます。
目が乾燥して角膜が露出すると、脳が「目が乾いて危険だ!目を守らなければ!」と判断し、緊急的に大量の涙を出させます。しかし、この涙は一時的なもので、目の表面に定着するための成分(ムチンや油分)バランスが整っていないことが多いため、すぐに流れ落ちてしまいます。
「涙が出るから潤っている」と勘違いしやすいのですが、実際は「乾きすぎて刺激を受けている」状態ですので、適切なケアが必要です。
乾燥を放置するとどのようなリスクがあるのか?

たかが乾燥と放置していると、取り返しのつかないトラブルに発展することがあります。
最も多いのが「角膜上皮障害」です。涙のクッションがなくなった状態で瞬きを繰り返すことで、黒目の表面(角膜)に無数の細かい傷がつきます。ここから細菌やウイルスが侵入すると、角膜感染症を引き起こし、最悪の場合は視力が低下する恐れもあります。
また、冬場は免疫力も低下しがちですので、乾燥によってバリア機能が落ちた目は、結膜炎などの感染症にもかかりやすくなります。さらに、乾燥による見えにくさは、頭痛や肩こりといった全身の不調にもつながります。最後に、生活習慣の改善です。
自宅やオフィスで今すぐできる対策はありますか?

薬を使わずにできる環境づくりとセルフケアが重要です。
- 加湿を徹底する
加湿器を使用し、室内の湿度を50%〜60%に保ちましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルを干すだけでも効果があります。 - エアコンの風を避ける
暖房の風が顔に直接当たらないよう、風向きを調整してください。風が当たると、涙の蒸発スピードが格段に早まります。 - 目を温める(温罨法)
蒸しタオルやホットアイマスクで目を温めると、マイボーム腺の詰まりが解消され、質の良い油分が分泌されるようになります。1日1回、5分程度行うのがおすすめです。 - 意識的な瞬き
スマホやPCを見ていると瞬きの回数が激減します。「パチパチ」と軽くするだけでなく、時々「ギューッ」と強く目をつぶる瞬きを行うと、マイボーム腺から油分が出やすくなります。
どのような症状が出たら眼科を受診すべきか?

市販の目薬を使っても改善しない場合や、以下の症状がある場合は、早めに眼科専門医を受診してください。
- 目の痛みが強い、または数日続く場合。
- 充血がひどい場合。
- 目やにの色が黄色や緑色(細菌感染の疑い)の場合。
- 視力が落ちたと感じる場合。
- 目を開けているのがつらい場合。
これらは単なるドライアイではなく、角膜の傷や他の目の病気が隠れている可能性があります。自己判断で市販薬を使い続けると、防腐剤の影響でかえって症状を悪化させることもあるため注意が必要です。
まとめ
冬の目の乾燥は、空気の乾燥や暖房だけでなく、寒さによる油分分泌の低下も大きく関係しています。「涙が出る」「まぶしい」といった症状も乾燥のサインである可能性があります。
大切なのは、湿度管理や目を温めるケアで涙の質を保つこと、そして違和感があれば早めに眼科を受診することです。適切な対策を行い、冬の厳しい乾燥から大切な瞳を守りましょう。
よくある質問(Q&A)
Q:市販の目薬を選ぶときのポイントはありますか?
A: 防腐剤フリー(無添加)」の人工涙液タイプがおすすめです。充血をとる成分が入っているものは、一時的に白くなりますが、血管収縮剤の影響でかえって乾燥や充血を悪化させる場合があるため、常用は避けましょう。また、保湿成分であるヒアルロン酸配合のものも良いでしょう。
Q:コンタクトレンズは冬でもつけていて大丈夫ですか?
A: コンタクトレンズは涙を吸い取って蒸発させてしまうため、乾燥が強い冬は装着時間を短くすることをおすすめします。特にソフトレンズは乾くと変形し、角膜を傷つける原因になります。帰宅後はすぐにメガネに変えるなど、目を休ませる時間を作りましょう。
Q:目を洗う(洗眼)習慣は乾燥対策になりますか?
A: 水道水や市販の洗眼薬で頻繁に目を洗うのはおすすめできません。涙に含まれる大切な保湿成分や油分まで洗い流してしまい、かえって乾燥が悪化します。目やにが気になるときは、点眼薬で洗い流すようにしましょう。
Q:食事で目の乾燥を防ぐことはできますか?
A: はい、体の内側からのケアも大切です。特に青魚(サバ、イワシなど)に含まれる「オメガ3脂肪酸」は、マイボーム腺の油の質を改善し、涙の蒸発を防ぐ効果が期待されています。また、粘膜を強くするビタミンA(緑黄色野菜など)も積極的に摂りましょう。
Q:寒い屋外に出ると涙が止まらなくなるのはなぜですか?
A: 冷たい風が目に当たると、急激な乾燥刺激が加わり、防御反応として涙が大量に出るためです。また、冷気で鼻涙管(涙の排水溝)が収縮し、涙が鼻へ抜けにくくなることも原因の一つです。風よけのためにメガネやサングラスをかけるのが効果的です。
もし、「自分の症状に当てはまるかも?」と思ったら、まずは今夜、ホットタオルで目を温めてみてください。それでも改善しない場合は、当院にご相談ください。